人権教育の取り組みの中で大切にされてきたのは、実践を伴わない「理念論やイデオロギー」ではなく、「事実と実践」です。それは「差別の現実に深く学ぶ」という言葉で、大切に伝えられてきた人権教育の「原則」です。どんな差別の現実があり、どんな実践でそれに関わっていったのかという、そんな一つ一つの具体的な実践を重ねることからしか、反差別の取り組みは生まれないからです。
そうした願いから、県人教では、特に県人教主催の進路学力保障や部落問題学習に関わる研修会の参加者や、各地区の推進リーダーの方々には、自身の実践レポートを書くことをお願いし、お互いの取り組みを交流し学習する時間を設定しています。それは、一人ひとりが自身の実践を見つめ、レポートを書く過程を通して、またレポート討議を通して、自身の「見てなさ具合」や「見えてなさ具合」に気付かされることになり、それは多くの人にも大切な学びとなり、そこと向き合うことが、私たちの背中を押してくれる大きな力となるからです。
「レポートを書くこと」=「事実と実践から学ぶこと」
自分の周りや子どもたちの生活の中にどんな差別の「現実」があるのか、そしてそんな「現実」に対して自分はどのように胸を痛め、悩み、そこにはどんな課題があると考え、そのためにどんな仲間づくりや関わりをし、そこから何を学び、変わっていくことが出来たのか、もしくは変わっていきたいと願うのか、そんなことを自身の「事実と実践」を通して向き合い、考えていくことがレポートを書くということです。そして、それを通して自身の「見てなさ具合」「見えてなさ具合」に気づくことは、私たちの生き方をも変えていく大きな力になり、さらに私たちの人生を豊かにするものにもなり得るのだと思います。
だから、レポートは他人から求められて仕方なく書くものではなく、自分自身のために書くものだと思います。だれにとっても、書くべき宝物がきっと自分の日常の中にあり、それを自分の中だけにしまっているのはもったいないです。ぜひ、多くの人たちの前に出して、みんなの宝物にしてほしいと思います。あなた自身のために、そして仲間とともに差別をなくしていくために、ぜひ、レポートを書いてください。
Q:教えてください。教員です。レポートはどう書けばいいのでしょうか?
質問:自分の実践を振り返るために、レポートを書くことが大切だと聞きましたが、どんなことを書けばいいのか分かりません。レポートについて教えてください。
《返答》さまざまに課題を持つ子どもたちが私たちの前にいます。見ようとしなければ見えないことの中に差別の現実があります。その課題の克服をめざし、子どもたちが自分らしさを輝かせて生きていけるように支援者が寄り添い、ともに悩み、壁にぶつかりながら歩んできた、そんな子どもを中心にしたかかわりの記録がレポートです。特別なことではなく、日々の実践そのものですね。
そんな視点で見ると、教員であれば、子どもたちを前にしている自分だからこそ気づくことが日常の中できっとたくさんあり、そんなところと向き合うことで見えてくるものや、子どもや自分自身の変容(変化)があるだろうと思います。くれぐれも、学校や所属団体の「システムの報告」ではなく、そんな子どもとの関わり合いを、そしてその中で自分が学んだことや悩み、悔しい思い、子どもや自分自身の変化する姿をしっかり見つめ直し、書いてみて下さい。
「取り組みの結果、こんな立派なことが出来た」ということを報告するのがレポートなのではありませんので間違えないでください。うまくいかないこと、出来ていない現実としっかり向き合うことから、光が見えてくるものです。教員は子どもと関わることが仕事ですから、書くことがない教員はいないと思います。レポートを書くことは、教員としての自身の姿を見つめ直し、子どもとの関わりについて考えるいいチャンスになると思います。そして、それはきっとあなた自身の何ものにもかえがたい大切な宝になると思いますよ。ぜひ、あなたのレポートを書いてください。
◇レポートを書くにあたり意識してほしい点
①レポーターの人権問題との関わり(生まれて今まで)、部落問題と出会い(自分の立ち位置の整理)、過去がどうであったか(変わり目前)
②レポートのきっかけに(どこに)差別・人権問題があるのか?
③子どもの気持ち、保護者の気持ちや願いは?
④親子に寄り添っているか
⑤教職員個人の取り組み、思い込みでしていないか?連携があるのか?
⑥なぜ、こんな実践(なかまづくり、教育内容づくり、進路学力保障)をするのか
⑦実践する中で子ども、保護者、教職員の変わり目は?展望は?
⑧実践により子どもや親の姿に揺れ、迷い、怒りから誇り、自信、元気さがあるか
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