「守秘義務」があるから、個人情報は「伝えられない」のでしょうか?
次の話は、以前、ある小学校に伺った際に、そこの先生たちが口をそろえて話したことです。
「私たちには守秘義務があるので、私の学校ではクラス担任として知り得た子どもの個人情報は、クラス担任だけの情報にとどめて、学年が上がったときに次のクラス担任にも決して伝えません。子どものプライバシーに関わることは私たちには守秘義務があるから誰にも伝えられないし、先入観や偏見を持たずに白紙で子どもに関わることがいいのです。」と。
皆さんはどう考えますか?
「プライバシーの保護」や「守秘義務」という言葉の下で、連携の困難さがあることが学校現場から時々報告されることがあります。保育園(幼稚園)から小学校へ、中学校へ、そして高校へ子どもが進学する際に、また進級してクラス担任が変わる際にも「子どものプライバシーに関わることは伝えるべきではない」と考えられることで、子どもをサポートするために必要な大切な情報が支援者間で伝えられず、結果として様々な子どもの「課題」が子どもの「自己責任」とされてしまっているのです。
「守秘義務」があるから、子どものプライバシーに関わることは伝えられないというとらえ方は正しくありません。子どもたちの持つ様々な「立場」や「課題」に関する情報やとりくみは、プライバシーに配慮した上で支援者の間で共有すべきものであり、「守秘義務」があるからこそ伝えられるのです。これを「相互守秘」と言います。それが、支援者に「偏見」を持たせるものであるというとらえ方も、あたっていません。「偏見」ではなく「事実と実践」を連携し、つないでいくことが必要であり、「課題」を共有できてはじめてその支援が可能になるのです。プライバシーへの配慮は当然のことですが、プライバシーに配慮するあまり、支援のための必要な情報を支援者間で伝え合わないことは支援を放棄することです。
連携に関して共通理解しておきたいことが4点あります。
【連携に関して共通理解しておきたいこと】
①子どもたちにはそれぞれの生活背景や課題があり、その支援をつないでいくこと(支援の連携)は子どもをサポートしていく上で不可欠である。
②「守秘義務」があるので、子どもをサポートしていく上で必要な情報は伝えてよい。(お互いに「守秘義務」があるから、プライバシーに関わることであっても、必要な情報は伝えられる)
③予断と偏見ではなく、事実と実践を引き継ぐこと。(単なる情報交換にならないこと)✳︎サポートするための情報であることを明らかにすること。
④支援を連携していくには、支援者間の定期的な情報交換会だけでなく、必要なときにいつでも相談しあえる日常の関係(信頼関係)づくりが必要である。
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